『父の詫び状』向田邦子 必読!現代エッセイの”真打ち”と呼ばれる作品
『父の詫び状』向田邦子著 を読みました。
私は正直、話があっちこっち飛んでいって行ったり来たりする傾向が強いタイプのエッセイを読んでいると忙しなく酸欠マシンガントークをして結局内容がまとまってない話をする自分を見ているようになるので苦手でした。
だけど、この向田さんのエッセイは日常に飛沫してふわふわ浮遊している小さな出来事から感じる感情を大きな空の下で見事に網の目の細かい虫とり網でキャッチして最後には一つの小さなプラスチックのクリアボックスに納めるのです。
作品の時代背景としては、戦前から戦後の復興期における家族カースト絶対的頂点に君臨する昭和のお父さんを中心に娘の視点からなんてことのない家族の息遣いを懐かしくユーモアいっぱいに描いて、最後には必ず読者に素直に家族のことを愛させてくれる。
そんな小説の中で相手が見えなくなるほどの愛を感じたエピソードを一つ紹介します。
保険会社に勤める父が夜中に宴会での豪奢な食事の一部を折詰として持って帰ってきて、ほろ酔いでいつもの威厳が半減している父は寝ぼけ眼の子供たちを起こす。
父は普段見せない柔和な表情で鼻歌を交えながら子供たちに折詰を取り分けるのである。子供たちが泡を吹いて気絶する勢いで眠そうな様子を見て、ようやく父も寝かしてやれと母に告げる。
美味しい食事をした後にそれを食べて子供たちが「美味しい!」と幸せにその食事を頬張る姿を想像すると、早く帰って一刻も早く食べさせてやりたいと夜中などお構いなしに自分の溢れた愛を伝えたくなったのかな。
愛は実はひどく小さなことにいつも隠れていて、こんな父の不器用な伝え方から感じとらないといけない難しく、なんてカワイイものなんだと思いました。
有名すぎる作品なので読んだことのある方は多いと思いますが
些細な日常からたくさんの愛を感じられることを教えてくれるこの作品最高!(頭の悪い締め方)